ビジネス英語は難しくない
2016/02/27
とある経営者との歓談。彼曰く、「ビジネスは難しくはない、ビジネスは厳しいだけなのだ」
ビジネス英語を御大層なものとして扱い、異文化コミュニケーションを学問として格上げする世の風潮に対する違和感。彼のこの一言で氷解した。
現場の厳しさを知らないコンプレックスが、難しく「見える」知識武装に人を駆り立てる。
人はシンプルな厳しさよりも、複雑で難しく見える知識や、まあたらしく「見える」新理論に惹かれる。英語力不足、知識不足を理由に、厳しい現場で汗をかくことを先送りする。
「ビジネスの厳しさ」と向き合わない限り、TOEICを満点とろうが、異文化知識の大家になろうが、己の中の虚しさは埋められない。もっとも、だからこそさらに英語を磨き、活字をむさぼることを続けてしまうのだろう。僕が英語講師でありながら、英語学習熱を煽ることに一定の距離を保っているのは、こういう思いがあるからなのだ。机上の学びをやりすぎると、頭でっかちになり、やがて本来もっともビジネスパーソンに必要な、現場で戦う勇気が後退する。
日本がこの先衰退の一途を辿るのかどうかは、おそらくこの「ビジネスの厳しさと向き合う人材」の比率にかかっている。ビジネス英語はあくまでも、そんな彼らを支えるツールに過ぎない。彼らにすぐに使ってもらうものだから、ビジネス英語は難しいしいものに格上げする必要がないし、してはいけないのだ。
ビジネス英語は難しくない。だから誰でも身に付けられる。しかし、ビジネスの厳しさと向き合うマインドは一朝一夕には行かない。
「ビジネスの現場で汗をかくことを惜しむな。」これは受講者との知識差に安住しがちな我々講師にこそ向けるべき言葉である。